建設業許可を個人事業主で取るか法人か?500万円ラインや費用・条件まで徹底解説

くらし

500万円を超える工事が増え、「そろそろ建設業許可を取ってください」と元請に言われているのに、個人事業主のまま取るべきか、法人を作ってからにすべきか判断できない。この状態が続くほど、受注機会と信用力を静かに失っています。しかも現場では「500万円以下なら分割すれば大丈夫」「名義貸しで建設業許可証だけ借りればいい」といった裏ワザが飛び交いますが、多くはリスクの中身が理解されないまま使われています。

この記事は、建設業許可を検討する個人事業主や一人親方に向けて、許可が本当に必要かどうかの判定から、経営業務管理責任者や専任技術者の条件、必要書類、貸借対照表の見られ方、社会保険加入、費用と期間、自分での申請と行政書士への依頼比較までを一気通貫で解説します。さらに、個人で取得する場合と法人で取得する場合のシナリオ、個人事業主から法人への継承のポイント、500万円ラインの分割契約や名義貸しが行政処分に至る典型パターンも押さえます。

読み終えるころには、「自分は今許可を取るべきか」「個人と法人どちらで進めるか」「どこから専門家に任せるか」を、感覚ではなく数字と条件で決められる状態になります。

  1. 建設業許可を個人事業主が本当に取るべきか?最初の五つのチェックポイント
    1. 建設業許可が要る工事と要らない工事の実務境界線
    2. 500万円の請負金額と分割契約の誤解が招く落とし穴
    3. 一人親方が許可なしで続けた場合に現場で起きがちな三つのリスク
  2. 個人事業主でも建設業許可は取れるのか?経営業務管理責任者と専任技術者のリアル
    1. 一人親方が経営業務管理責任者を兼ねるときに問われる五年の中身
    2. 実務経験証明書で役所が見ているポイントと証明資料の集め方
    3. 資格で専任技術者になる人と十年の実務経験で勝負する人の違い
  3. 建設業許可を個人事業主で申請するときの必要書類と貸借対照表の考え方
    1. 個人事業主が必ず準備しておきたい実務経験と財産の証明書類一覧
    2. 確定申告書と貸借対照表のどこを見られて財産的基礎ありと判断されるのか
    3. 営業所の写真や賃貸借契約書など見落とされがちな証明資料
  4. 建設業許可を個人事業主で取るときの費用と時間、自分でやる場合と専門家に任せる場合の損得勘定
    1. 行政庁の申請手数料と取得までの期間の目安
    2. 個人事業主が自分で申請したときにかかる実質コスト(時間・機会損失・やり直しリスク)
    3. 行政書士報酬の相場と費用以上の価値が出やすいケースや出にくいケース
  5. 個人事業主のままでいくか、法人を作ってから進めるか?建設業許可の取り方で将来が変わるシナリオ比較
    1. 売上規模や従業員数と元請比率から見た今は個人で十分のケース
    2. 五年後を見据えて最初から法人で建設業許可を取った方が良いパターン
    3. 個人事業主から法人へ建設業許可を継承するときに必ず押さえるべき三つの視点
  6. 社会保険と建設業許可、個人事業主や一人親方が誤解しやすい加入ライン
    1. 常時五人未満の個人事業主と社会保険、任意と実務上求められるのズレ
    2. 許可審査で社会保険加入状況が問われた事例と是正の進め方
    3. 元請や公共工事と融資が社会保険加入をどう評価しているのか
  7. 500万円ラインと裏ワザに頼った結果どうなるか?名義貸しや分割契約の終着点
    1. 建設業許可の名義貸しが現場でどう行われてどう発覚しているか
    2. 500万円を分割する契約が一体の工事と判断される典型パターン
    3. 実際に起きた行政処分例から学ぶ一人親方が避けるべき三つの行動
  8. 建設業許可を取ったあとの五年、その先の法人化や事業承継をどう描くか
    1. 決算終了後の変更届や決算報告をサボったときに起きる現実的なペナルティ
    2. 五年ごとの更新で慌てないための毎年やっておく小さな準備
    3. 親方から後継者へ、個人の建設業許可をどう事業承継に活かしていくか
  9. ケース別で見る建設業許可を個人事業主が取るべきタイミング、三人の仮想ストーリー
    1. 年商一千五百万円で一人親方かつ元請比率が低い人は今は様子見が正解になりやすい理由
    2. 年商三千万円で常時二人を雇う個人事業主が許可取得で変わる受注単価と融資の現実
    3. 公共工事を視野に入れ始めた事業主が法人化と許可取得を同時に進めるときの注意点
  10. この記事を書いた理由

建設業許可を個人事業主が本当に取るべきか?最初の五つのチェックポイント

「今のままでも現場は回る。でも元請からはそろそろ許可を取れと言われる。」このモヤモヤをスパッと整理する起点が、次の5つのチェックポイントです。

  • 1回あたりの工事請負金額がどこまで上がってきているか

  • 元請との契約書が自社名で締結されているか、職人名義のままか

  • 追加工事をまとめると500万円前後になっていないか

  • 今後5年以内に従業員や協力業者を増やす予定があるか

  • 公共工事や銀行融資を視野に入れ始めているか

一つでも「当てはまるかも」と感じるなら、許可を取る・取らないを真剣に検討すべきステージに入っています。

私の視点で言いますと、この5項目に気づかないまま「なんとなく今まで通り」で続けてしまうケースほど、後から慌てて相談に来ることが多い印象です。

建設業許可が要る工事と要らない工事の実務境界線

現場でよく勘違いされるのが、「小さい工事だから大丈夫だろう」という感覚です。実務上は、次の軸で線引きされます。

見られるポイント 許可が要る方向に働くケース 許可が不要なケースの目安
請負金額 税抜500万円を超える工事一式 軽微な修繕・単発の小工事
契約の形 元請として一括で受注 大手の下請で、ごく一部のみ担当
工事の内容 建築一式工事や大規模リフォーム 水栓交換などごく小さな作業

ポイントは、「工事ごとの請負金額」と「誰の名前で一括して受けているか」です。金額だけでなく、工事のまとまり方と契約書の名義で判断されます。

500万円の請負金額と分割契約の誤解が招く落とし穴

500万円ラインを意識するあまり、見積書を分割する相談は少なくありません。しかし、役所は「一体の工事かどうか」を次のような目線で見ています。

  • 工事場所が同じか

  • 期間が連続しているか

  • 工事内容が一つの目的でまとまっているか

  • 元請と下請の顔ぶれが同じか

例えば、外壁改修を「足場」「塗装」「コーキング」と3枚の契約書に分けても、同じ現場・同じ期間・同じ目的なら、一体の工事として合算されるリスクが高いです。

さらに、500万円を少し超えそうなときだけ不自然に分割していると、元請側の内部調査やトラブル時の確認で発覚しやすくなります。現場では「みんなやっている裏ワザ」のように扱われがちですが、税務調査や監督署の調査のタイミングで一気に過去分まで見直されるケースもあります。

一人親方が許可なしで続けた場合に現場で起きがちな三つのリスク

許可を取らずに続けているからといって、明日いきなり捕まるわけではありません。ただ、静かに効いてくるリスクが3つあります。

  1. 元請からの仕事が頭打ちになるリスク
    受注量が増えてきたタイミングで、「これ以上は許可がないと任せられない」と上限を決められることがあります。現場力はあるのに、契約金額だけが伸びないパターンです。

  2. 条件の良い下請ポジションに入れないリスク
    大手や公共工事の現場では、一次下請や主要協力業者になる条件として許可取得と社会保険加入をセットで求める動きが強まっています。実務経験は十分でも、書類の要件で門前払いになる例が増えています。

  3. 金融機関・税務面での信用力が伸びないリスク
    銀行は決算書だけでなく、建設業としての許可や社会保険加入状況も見ています。許可がないと、融資やリスケ交渉で「事業としての継続性」が弱く見られ、結果として資金調達の選択肢が狭まります。

この3つは、目の前の工事代にはすぐ反映されませんが、5年から10年単位で見ると売上・年収・退職後の年金額までじわじわ効いてくる要素です。今の現場が回っているかどうかだけでなく、「5年後にどのポジションで仕事をしたいか」を一度紙に書き出してみると、許可を取るタイミングが見えやすくなります。

個人事業主でも建設業許可は取れるのか?経営業務管理責任者と専任技術者のリアル

「腕には自信があるのに、この要件がさっぱり分からない」
多くの親方がつまずくのが、経営業務管理責任者と専任技術者です。ここをクリアできるかどうかで、取得できるかどうかがほぼ決まります。

一人親方が経営業務管理責任者を兼ねるときに問われる五年の中身

経営業務管理責任者は、簡単に言えば「商売を回してきた責任者としての経験」が問われます。ポイントは年数よりも、中身と証拠です。

よく聞かれるのは次のようなケースです。

  • 一人親方として5年以上、継続して請負工事をしている

  • 個人の屋号で、元請から直接仕事を受注している

  • 見積書作成、契約、請求、資金繰りまで自分で回している

この場合でも、口頭受注ばかりで契約書や請求書が残っていないと審査で詰まります。経営業務の実態を示すには、次の資料を組み合わせると評価されやすくなります。

  • 工事請負契約書や注文書

  • 請求書・領収書・振込明細

  • 元請とのやり取りが分かるメールやFAX

  • 青色申告の申告書や決算書

私の視点で言いますと、役所は「書式のきれいさ」よりも「継続して事業をしてきた筋が通っているか」を見ています。年ごとの売上推移と工事の内容が、申告書と帳簿でつながっているかを意識して整理すると通りやすくなります。

実務経験証明書で役所が見ているポイントと証明資料の集め方

専任技術者の実務経験証明で一番多いトラブルは、「年数が足りない」よりも「証拠が散らばっている」ことです。特に一人親方歴が長い方ほど、古い書類を捨ててしまいがちです。

役所が見ている主なポイントは次の3つです。

  • 対象業種の工事を継続して行っていたか

  • 元請・下請を問わず、工事の実態が分かるか

  • 年数と工事内容が、確定申告などの数字と矛盾しないか

そこで、実務経験証明書を作る前に、次のように資料をかき集めるとスムーズです。

  • 過去の工事の一覧表を年ごとに作る

    (工事名、工期、金額、発注者、請負か下請か)

  • 一覧表に対応する資料を紐づける

    (契約書、請求書、入金の通帳コピー、現場写真など)

  • 税務署へ提出した確定申告書・青色申告決算書を年度順に並べる

資料が足りない年は、銀行の入金履歴と現場写真、見積書を組み合わせて補完するケースもあります。名義だけ借りたような実態のない経験と、本当に現場で汗をかいた経験は、こうした証拠の積み上げで区別されていきます。

資格で専任技術者になる人と十年の実務経験で勝負する人の違い

専任技術者は、資格で取るルート実務経験で取るルートで戦略がまったく変わります。

次の表がイメージしやすい比較です。

項目 資格ルート 実務経験10年ルート
主な対象 国家資格保有者 職人上がりの親方
審査の軸 資格証明書 実務経験証明書
準備の大変さ 手続き中心 書類集めが重い
向いている人 若手〜中堅、学歴や資格がある人 ベテラン親方、現場一筋の人
リスク 資格が業種に合わない場合がある 書類不足で年数が認められない

資格ルートは、対象の資格さえ持っていれば証明書1枚で話が早く進みます。一方、実務経験10年は、工事ごとの証拠を積み上げる事務作業の根気が求められますが、学歴や資格に左右されないメリットがあります。

現場感覚としては、40代以上で長年親方をしている方は、結果的に実務経験ルートの方が早いことが多いです。逆に、これから公共工事や元請比率を高めたい若手は、時間と費用を投資してでも資格取得を視野に入れると、将来の業種追加や更新のたびに有利になります。

どちらを選ぶにしても、「今の売上」と「5年後に取りたい案件」の両方から逆算して考えることが、許可を取り切るための近道になります。

建設業許可を個人事業主で申請するときの必要書類と貸借対照表の考え方

腕には自信があるのに、書類の山を前に手が止まる。多くの一人親方がつまずくのがここです。実務では「どの紙を、どのレベルまで揃えれば、役所が安心してハンコを押せるか」が勝負どころになります。

私の視点で言いますと、ここを押さえれば申請全体の7〜8割は片付いたも同然です。

個人事業主が必ず準備しておきたい実務経験と財産の証明書類一覧

まずは、ざっくりでも良いので「経験」と「お金」を証明できる紙を棚卸しすることが重要です。現場では、完璧さより量と連続性が評価されます。

代表的な書類をまとめると次のようになります。

目的 主な書類 実務でのチェックポイント
実務経験の証明 工事請負契約書、見積書、請求書、入金履歴、現場写真 工種・金額・工期・発注者名が分かるか、年ごとに途切れていないか
経営業務の実態 元請との基本契約書、下請への発注書、帳簿 自分が「経営側」として契約・支払をしている事実が見えるか
財産的基礎 確定申告書一式、貸借対照表、預金通帳の写し 債務超過でないか、運転資金に近い残高があるか
営業所の実在 賃貸借契約書、営業所の写真、看板の写真 住居と完全な同一スペース扱いになっていないか

実務経験証明で特に多い悩みは「昔の契約書が残っていない」ケースです。この場合は、銀行口座の入金履歴と請求書、現場写真をセットで出して「この工事を自分が受注し、施工した」というストーリーを見せる形が有効です。

確定申告書と貸借対照表のどこを見られて財産的基礎ありと判断されるのか

税務署へ出す確定申告書は、そのまま許可審査の「家計簿」として見られます。特にチェックされやすいのは次の部分です。

  • 所得税の確定申告書の事業所得欄

  • 青色申告決算書の損益計算書と貸借対照表

  • 減価償却資産の明細(車両・機械など)

貸借対照表では、ざっくり言えば「マイナスになっていないか」と「最低限の運転資金があるか」がポイントです。

  • 資産合計より負債合計が大きい場合は、債務超過として要注意

  • 現金・預金が極端に少ない場合は、通帳コピーで直近残高を補強

  • 車両や工具を事業用資産として計上していると、信頼度が上がりやすい

青色申告で帳簿をきちんと付けていると、審査側も「管理能力がある」と判断しやすくなります。クラウド会計ソフトを使っていても構いませんが、印刷した貸借対照表と決算資料をセットで整理して提出できる形にしておくことが重要です。

営業所の写真や賃貸借契約書など見落とされがちな証明資料

現場感覚だと「仕事は現場でしているから、自宅で十分」と考えがちですが、審査では営業所が事業の基地として機能しているかが問われます。ここを甘く見ると、窓口で予想外の指摘を受けやすいポイントです。

用意しておきたいのは次のあたりです。

  • 事務スペースの写真(机、パソコン、書類棚、図面置き場が分かるもの)

  • 玄関や外観の写真(表札・看板・屋号が写っているもの)

  • 賃貸借契約書(使用目的に「事務所」「店舗」などの記載があるか要確認)

  • 駐車場や資材置き場を使っている場合は、その契約書や配置写真

自宅兼事務所のケースでは、居住スペースと営業所スペースが完全に一体だと、役所によっては厳しく見られます。机1つでも良いので「ここが事業の司令塔」というコーナーを作り、写真で示すことが有効です。

また、社会保険の加入状況を営業所住所とひもづけて確認されるケースもあります。保険の適用事業所として登録している住所と、許可申請する営業所の住所が食い違っていないか、事前に見直しておくと安心です。

書類づくりは地味ですが、ここを固めておくと、500万円を超える工事の受注や融資相談の場面で「この人はきちんと事業管理ができている」と評価されやすくなります。現場で汗をかいて稼いだ信用を、紙の力で最大限に見せていくイメージで整えていきましょう。

建設業許可を個人事業主で取るときの費用と時間、自分でやる場合と専門家に任せる場合の損得勘定

「手数料はわかったけど、実際いくら・どれだけ時間を持っていかれるのか」が読めないと、一歩目が出ません。ここでは、現場でよくあるパターンを数字と体感ベースで整理します。

行政庁の申請手数料と取得までの期間の目安

建設業の新規申請では、都道府県へ支払う手数料がまず発生します。金額は地域で多少違いますが、おおむね10万円前後を見ておくと現実的です。これに収入証紙代や郵送費が少し乗るイメージです。

受付から許可が下りるまでの期間は、書類が整っているケースで1~2か月程度が一般的な目安になります。ここで効いてくるのが「補正の有無」です。
書類不備で補正が1往復入ると、体感で2~3週間は平気で後ろにずれると考えておいた方が安全です。

個人事業主が自分で申請したときにかかる実質コスト(時間・機会損失・やり直しリスク)

手数料だけ見れば「自分でやればタダ」と感じますが、現場感覚で言うと次のコストが重くのしかかります。

  • 書類作成・要件調査

    認可要件の読み込みや、実務経験・経営業務管理責任者の確認に、初回は20~30時間かかる人が多いです。

  • 証明書・添付書類の収集

    税務署・年金事務所・法務局・市役所などを回り、平日昼間に動く必要があります。現場を抜けるので、1日工事を休む感覚になりやすいです。

  • やり直しリスク

    実務経験証明や専任技術者の書き方が甘いと、窓口で補正を指示されます。補完資料の集め直しでさらに半日~1日つぶれるケースも珍しくありません。

特に一人親方の場合、「書類のために1日空ける」イコール丸一日の売上をあきらめることになります。日当2万円~3万円の人なら、手数料に加え、見えない経費が数万円単位で積み上がっているイメージです。

行政書士報酬の相場と費用以上の価値が出やすいケースや出にくいケース

申請を専門の行政書士へ依頼する場合、報酬は地域と内容で幅がありますが、一般的な新規申請で10万~25万円程度に収まることが多いです。ここでは、費用対効果を冷静に整理してみます。

下の表は、自分で進める場合と専門家へ依頼する場合のざっくり比較です。

項目 自分で申請 行政書士へ依頼
現金支出 手数料のみ 手数料+報酬
時間コスト 20~40時間 3~5時間程度
不備リスク 高い 低い
現場への影響 休工日が増えやすい 工事予定を組みやすい
将来の更新・変更対応 毎回調べ直し 顧問的に相談しやすい

費用以上の価値が出やすいのは、例えば次のようなケースです。

  • 500万円超の案件がすでに控えている人

    許可取得が1か月早まるだけで、売上が数百万円単位で前倒しされます。報酬は十分回収できます。

  • 経営業務管理責任者や専任技術者の要件判定が微妙な人

    過去の請負契約書や請求書、銀行の入金履歴、現場写真を組み合わせて実務経験を組み立てる必要があり、プロの知識がストレートに効きます。

  • 将来、法人化や事業承継まで見据えている人

    個人の許可から法人への引き継ぎ方を、最初の段階から設計しておくと、5年後・10年後の更新や組織変更で迷いにくくなります。

逆に、費用対効果が出にくいのは、次のようなパターンです。

  • 下請中心で500万円以下の仕事しか当面ない

  • 事務作業が得意で、税務申告や決算も自分でこなしている

  • 時間にある程度余裕があり、多少許可取得が遅れても売上に大きく影響しない

私の視点で言いますと、日当計算で自分の時間単価を出し、「報酬 ÷ 自分の時間単価」をひとつの目安にしてみると判断がしやすくなります。例えば、自分の時間単価が1時間5,000円で、専門家へ頼めば30時間分の作業が減るなら、15万円までの報酬は理屈の上では「トントン」です。そこに、やり直しリスクの回避や更新時の相談窓口という安心料をどこまで乗せるかが、最終的な判断ポイントになります。

個人事業主のままでいくか、法人を作ってから進めるか?建設業許可の取り方で将来が変わるシナリオ比較

建設業の現場では「今の延長で食っていけるか」「元請に言われて慌てて形だけ整えるか」で5年後の景色がまったく変わります。ここでは、売上や従業員数、元請との力関係から、個人で進むか法人で攻めるかを具体的に整理します。

売上規模や従業員数と元請比率から見た今は個人で十分のケース

税務上の青色申告で堅実に申告しつつ、まだ大きく背伸びしない方が得なケースがあります。目安は次のようなラインです。

個人のままで様子を見やすいケースの目安

項目 個人で十分なことが多い目安
年商 1500万〜2500万円程度
従業員 常時0〜1人(アルバイト・手元ベース)
元請比率 下請が7割以上、500万円超の工事がほぼない
資金需要 当面大きな融資予定がない

このゾーンでは、無理に法人化しても、次のようなデメリットが出やすくなります。

  • 社会保険加入で手取りが急に減る

  • 事務・経理負担が増え、現場に出られる時間が減る

  • 税理士報酬などランニングコストが上がる

一人親方として「今は許可なしの工事が中心」「元請も500万円以下で振ってくれている」という状態なら、まずは帳簿と請求書、入金記録を整え、将来の許可申請に備えるフェーズと考えた方が合理的な場合が多いです。

五年後を見据えて最初から法人で建設業許可を取った方が良いパターン

一方で、最初から法人で攻めた方が、5年単位で見ると圧倒的に有利になるケースもはっきりあります。私の視点で言いますと、現場で次のサインが出ている人は、法人と許可をセットで検討した方が動きがスムーズです。

  • 年商3000万円を超え、常時2人以上を雇っている

  • 元請から「次は一式で600〜700万の工事を振りたい」と言われている

  • 公共工事、法人顧客、マンション大規模修繕などを視野に入れ始めた

  • 銀行から設備投資・運転資金の融資を提案されている

このゾーンに入ると、法人化と許可取得によるメリットが一気に効いてきます。

  • 元請の工事請負契約で500万円の上限を意識せずに受注できる

  • 融資やローンの審査で「会社+許可」という信用力を出せる

  • 従業員の社会保険加入で求人・定着に差がつく

ポイントは「五年後にどうなっていたいか」を逆算することです。更新までの5年間で、売上や従業員数をどこまで伸ばしたいかを具体的にイメージすると、個人か法人かの答えがかなりクリアになります。

個人事業主から法人へ建設業許可を継承するときに必ず押さえるべき三つの視点

すでに個人名義で許可を取っていて、これから法人化するケースでは、「取り直せばいい」と軽く考えると痛い目を見ます。現場でトラブルになりやすいポイントは次の三つです。

  1. タイミングと空白期間の管理
    個人を廃業してから法人で許可が下りるまでの間は、許可がない状態になります。

    • その期間に500万円超の工事請負契約を結ぶと元請との関係が悪化
    • 継続案件の変更契約で金額が膨らむと、遡って指摘されるケースもあるため、契約スケジュールと申請時期を綿密に調整する必要があります。
  2. 経営業務管理責任者を誰にするかの社内調整
    個人の時は自分一人で完結していた立場が、法人では役員構成や経験年数で審査されます。

    • 実務経験が足りず、奥さんや親族を役員に入れても要件を満たせない
    • 番頭格の従業員を役員に上げるかどうかで揉める
      といった調整が、申請直前になって噴き出すケースが珍しくありません。
  3. 受注できる工種・規模が一時的に狭まるリスク
    個人で長年やってきた実績があっても、法人としては「新参扱い」される場面があります。

    • 元請の審査で「まずは小さめの工事から」と絞られる
    • 公共工事では、法人としての完成工事高や決算内容がゼロに近く、等級や格付けが低くなる

この三点を抑えたうえで、

  • 個人の許可更新のタイミング

  • 法人設立日と最初の決算期

  • 銀行融資や大型案件の予定時期

を一枚のスケジュールに落とし込むと、無駄なくスムーズに移行しやすくなります。現場では、ここを曖昧にしたまま突っ走り、名義貸しや500万円分割のようなグレーな対応に頼ってしまうケースが後を絶ちません。

将来の受注単価と信用力をどこまで上げたいかを基準に、「今は個人で地固め」「ここからは法人で一段ギアを上げる」という線引きを、数字と契約の現実から冷静に判断していくことが重要です。

社会保険と建設業許可、個人事業主や一人親方が誤解しやすい加入ライン

「自分は従業員も少ないし、まだいいだろう」と後回しにされがちな社会保険ですが、許可とセットで見ないと受注チャンスを取りこぼします。税務や確定申告と同じく、仕組みを知った人から得をしていきます。

常時五人未満の個人事業主と社会保険、任意と実務上求められるのズレ

法律上は、常時使用する従業員が一定数未満の個人事業なら、厚生年金と健康保険は「任意加入」の扱いになります。ここだけ聞くと「入らなくても問題ない」と感じやすいのですが、現場では次のようなズレが出ます。

  • 元請の社会保険未加入業者排除方針

  • 入札参加資格での保険加入要件

  • 銀行の融資審査での信用力評価

私の視点で言いますと、売上が伸び始めた親方ほど、このギャップで急ブレーキがかかるケースが目立ちます。税務上の経費計算だけでなく、「人を雇える体制か」を示す証明だと捉えると判断しやすくなります。

許可審査で社会保険加入状況が問われた事例と是正の進め方

新規申請や更新時には、社会保険・雇用保険の加入状況を申告する欄があり、ここでつまずく一人親方が少なくありません。典型的なのは次のような流れです。

  • 従業員を数人雇っているのに国民健康保険と国民年金のまま

  • 申請書にそのまま記載して窓口で指摘

  • 「このままだと審査が進まないので加入手続きも並行して進めてください」と是正指導に近い説明を受ける

対応のステップを整理すると、動き方が見えやすくなります。

  1. 現在の従業員数と雇用形態を整理(アルバイトも含め一覧化)
  2. 年金事務所と労働基準監督署、ハローワークへ相談・手続き
  3. 加入後に適用事業所番号などを証明する書類をそろえ、許可申請に添付

このプロセスは時間がかかるため、決算や確定申告、許可更新のタイミングから逆算して準備しておくと安全です。

元請や公共工事と融資が社会保険加入をどう評価しているのか

社会保険は、単なる「保険料の負担増」ではなく、外部からは事業の安定度を測る物差しとして見られます。現場での評価イメージを表にまとめると次の通りです。

見る側 社会保険加入の主なチェックポイント 評価されるポイント
元請会社 作業員名簿、保険加入状況の申告書 法令順守、下請管理のしやすさ
公共工事の発注者 入札参加資格審査での加入証明書 要件クリアかどうか
金融機関・融資担当 決算書、納付状況の確認 継続性、資金繰り管理能力

元請は、社会保険未加入の業者を使っているだけで自社が行政指導の対象になるリスクを意識しています。そのため、建設業の許可要件を形式的に満たしていても、「保険に入っていないなら500万円を超える工事は任せにくい」と判断されることが増えています。

融資の場面でも、保険料をきちんと支払いながら黒字を維持しているかは、返済能力の判断材料になります。税務署への確定申告書と同じく、社会保険の納付状況は「帳簿だけでは見えない経営の丁寧さ」を物語る情報として見られます。

一人親方としては負担が重く感じる部分ですが、元請からの受注単価アップや公共工事への足がかりとセットで考えると、長期的には「信用を買うための投資」に変わっていきます。

500万円ラインと裏ワザに頼った結果どうなるか?名義貸しや分割契約の終着点

「500万円を切れば大丈夫」「名前だけ借りれば通る」
そうささやかれた瞬間から、親方の事業はゆっくりと信用を失い始めます。
ここでは、現場で本当に起きているパターンだけに絞って整理します。

建設業許可の名義貸しが現場でどう行われてどう発覚しているか

名義貸しは、表向きはきれいな契約書でも、実務をたどるとすぐバレます。典型的な流れは次の3つです。

  • 許可を持つA社が元請と契約

  • 実際の工事、職人の手配、請求書の発行はBさん個人がすべて対応

  • A社は「手数料」だけ受け取り、現場には一度も来ない

私の視点で言いますと、発覚のきっかけは行政の調査よりも、次のような「事故」から始まるケースが多いです。

  • 仕上がりトラブルで施主が元請にクレーム→誰が実際に工事したか洗い出し

  • 元請の内部監査や取引先審査で、下請の社会保険や実体をヒアリング

  • 災害や事故で労災、損害保険の対応時に、現場の指揮命令系統を詳細に確認

このとき、入金口座や請求書の名義、現場写真のヘルメットのロゴなど「小さな証拠」が積み上がり、名義だけの関与だったと判断されやすくなります。

500万円を分割する契約が一体の工事と判断される典型パターン

500万円ラインを意識し過ぎた「分割契約」も、見られているのは金額より中身です。よくあるパターンを整理すると違反リスクが読めます。

パターン 行政が一体と見やすい要素 リスクの高さ
本体工事と追加工事を同時に打合せ 契約日がほぼ同じ、図面も一式
解体、躯体、仕上げを別契約 発注者と現場が同一で工期も連続
「サービス工事」として別紙扱い 見積書に最初から総額が書かれている 非常に高

判断のポイントは、工事の目的が一体かどうかと、工期や場所が連続しているかどうかです。
見積書や注文書、請負契約書を見比べて「最初からまとめて話が進んでいる」と読める場合、金額を分けても意味がありません。

一方で、数カ月後に施主が予算を追加して、本当に別工事として設計変更したケースでは、契約の経緯や打合せメモを残しておくことで、一体と見なされにくくなります。ここを曖昧にしておくと、税務調査や融資の審査でも説明に詰まりやすい点です。

実際に起きた行政処分例から学ぶ一人親方が避けるべき三つの行動

処分の公表内容を横断して見ると、狙われやすい行動パターンはかなり共通しています。個人で事業を続けるなら、次の3つは避けるのが安全です。

  1. 長期間の「実質元請」状態なのに許可を取らない
    元請1社からの受注がほとんどで、その会社の指示で下請をさらに手配しているケースです。工事請負の構造だけ見ると、完全に元請ポジションなのに認可を受けていないため、元請側も巻き込んで問題になります。

  2. 入金と請求書を別名義にして資金だけ回す
    名義貸しが疑われる典型です。請求書は許可業者名、入金口座は個人、といった形は、銀行の入金履歴や税務申告の段階でズレが浮き彫りになります。税務と許可の両方から疑われるため、ダメージが大きくなりがちです。

  3. 社会保険、税務申告、許可の要件を「後でまとめて整える」と先送り
    実務経験や専任技術の条件は満たしていても、確定申告書や帳簿、領収書を整理していないために証明ができないケースが多く見られます。結果として、焦って裏ワザに手を出しやすくなります。

安全側に振るなら、次のような段取りが現実的です。

  • まずは青色申告で帳簿と申告書を整え、収入と経費の流れを見える化

  • 工事の契約書、請求書、入金の記録を3〜5年分は整理して保管

  • 500万円近辺の案件が増えた段階で、行政書士や税理士に早めに相談

名義貸しや不自然な分割契約は、一時的には「仕事が回っているように見える」だけで、信用力や融資、公共工事のチャンスを自分から手放す行為に近いです。時間とお金を本当に節約したいなら、裏ワザではなく、証明できる形で事業を積み上げる方が結果的には早道になります。

建設業許可を取ったあとの五年、その先の法人化や事業承継をどう描くか

「許可を取った日がゴールだ」と思っていると、五年後に一気にツケが来ます。ここからの五年をどう走るかで、法人化や事業承継の選択肢がまったく変わってきます。

決算終了後の変更届や決算報告をサボったときに起きる現実的なペナルティ

事業年度が終わるたびに、決算変更届や事業年度終了報告の提出が必要になります。ここをサボると、次のような流れになりやすいです。

  • 役所からの催告・電話連絡

  • 更新申請時に「まず過去分を全部出してください」と足止め

  • 過去の決算内容を遡って確認され、経営業務や専任技術の実態まで突っ込んで質問される

とくに多いのが、個人の確定申告書は税務署に出しているのに、許可の決算報告だけ数年まとめて放置してしまうケースです。銀行融資や元請との取引で決算書の提出を求められたタイミングで、慌てて帳簿をかき集める方も少なくありません。

変更届を出さないまま、営業所の住所や役員(個人なら経営業務管理責任者に相当する人)が変わっていると、審査側から信用力を疑われます。「今の実態と書類が合っていない」状態は、更新拒否や監督処分の入り口になり得るので要注意です。

五年ごとの更新で慌てないための毎年やっておく小さな準備

五年に一度の更新でバタバタする現場と、淡々と通過する現場の違いは「毎年どこまで整えているか」です。整理しやすいように、年次でやることを表にまとめます。

タイミング やっておくこと ポイント
毎決算後 決算変更届・事業年度終了報告の提出 確定申告書・貸借対照表の控えを必ず保存
毎年通年 契約書・請求書・入金履歴・現場写真の整理 実務経験や工事経歴の証明にそのまま使える
人が動いた時 経営業務・専任技術者・従業員数の変動を把握 社会保険加入状況も同時にチェック
3~4年目 次回更新で必要な書類の棚卸し 法人化予定があればスケジュールに反映

更新で一番時間がかかるのは、過去5年分の工事内容と体制を思い出す作業です。現場ごとのファイルを作り、

  • 契約書または注文書

  • 請求書

  • 入金が確認できる通帳コピー

  • 完成写真

を1セットにしておくと、後から「どの現場で年商いくら積んでいたか」がすぐ出せます。社会保険の加入状況も、決算ごとに「今の人数なら加入義務があるか」「元請から何を求められているか」を確認し直すと、更新時に慌てず済みます。

親方から後継者へ、個人の建設業許可をどう事業承継に活かしていくか

個人で許可を取ったあと、次の壁になるのが「法人化」と「事業承継」です。ここを読み違えると、せっかく育てた元請との信頼や工事の種類が一時的に細くなることがあります。

私の視点で言いますと、現場で多いのは次のようなパターンです。

ステップ よくある展開 注意すべきポイント
1 親方が個人で許可を取得 経営業務管理責任者と専任技術者を自分で兼ねる
2 売上拡大で法人化を検討 法人名義で新規許可を取り直す必要が出る
3 法人の役員構成を決定 経営業務の要件を満たす人を誰にするかで社内調整が揉める
4 個人の実績を法人にどう引き継ぐか協議 工種・営業所・人員体制の一部が一時的に制限されるケースもある

個人の許可は、そのまま法人に「名義変更」できるわけではありません。法人として新規申請を行い、

  • 個人時代の経営業務の経験を、法人の役員が引き継いでいるか

  • 専任技術者が法人側に在籍しているか

  • 営業所や財産的基礎が法人として整っているか

を改めて審査されます。このとき、親方が役員から外れてしまうと、経営業務管理責任者の要件を満たす人がいなくなり、許可を取り直せない事態に陥ることがあります。

親から子への事業承継でも同じで、「いつ代表を交代するか」「どのタイミングで法人化するか」を、五年更新の節目に合わせて設計するとスムーズです。具体的には、

  • 2回目の更新までに、後継者を専任技術者候補として現場に立たせつつ実務経験を積ませる

  • 3回目の更新までに、後継者を役員または事業主として経営業務に関わらせる

  • 法人化は、許可の更新直後に行い、個人と法人の許可がしばらく並走する期間を確保する

といった時間軸を意識しておくと、元請や金融機関から見ても「あの会社は計画的に代替わりしている」と評価されやすくなります。

五年後、十年後も安定して工事を受注し続けるには、「許可の更新」と「法人化・承継」のスケジュールを一つのカレンダーで管理する発想が欠かせません。目の前の一件一件の工事に集中しつつ、帳簿と書類だけは未来の自分と後継者のために残しておくイメージで動いておくと、選べる道が格段に増えていきます。

ケース別で見る建設業許可を個人事業主が取るべきタイミング、三人の仮想ストーリー

「本当に今、許可を取りに走るべきか、それとも一呼吸おくべきか」。現場で一番もめるのは、この判断です。ここでは三人の仮想ストーリーで、タイミングと失敗しない攻め方を立体的に押さえていきます。

年商一千五百万円で一人親方かつ元請比率が低い人は今は様子見が正解になりやすい理由

まずは、下請中心で食いっぱぐれはないが、単価はそこそこの一人親方ケースです。
典型的な数字イメージは次のようになります。

項目 状況の目安
年商 1500万円前後
従業員 なし(手元はスポット)
仕事の7~8割 常用・手間請けの下請
1件あたり請負額 数十万~200万円台が中心
元請からの「許可取って」の圧 ほぼ無し

このステージで焦って許可取得に走ると、次のような「空振り」になりやすいです。

  • 許可があっても、単価が劇的に上がるわけではない

  • 実務経験証明や請求書の整理に時間を取られ、稼働日が減る

  • 社会保険や帳簿の整備まで一気に求められ、資金繰りがきつくなる

一方で、今のうちからやっておくと強い準備があります。

  • 工事ごとの契約書・注文書・請求書をファイルで年月順に保存

  • 銀行口座を仕事用とプライベートで分けて入金を見える化

  • 写真付きで現場記録を残し、後の実務経験証明に備える

このレベルの年商なら、「今すぐ申請」よりも「証拠づくりと経営数字の見える化」に時間を使った方が、数年後の取り方の選択肢が一気に広がります。

年商三千万円で常時二人を雇う個人事業主が許可取得で変わる受注単価と融資の現実

次は、売上も仕事量も増え、二人を常時雇っているケースです。
私の視点で言いますと、現場で一番「伸ばしどき」を逃してほしくないゾーンがここです。

項目 許可なしの現状 許可取得後によく起きる変化
年商 約3000万円 3500万~5000万円に伸びやすい
従業員 職人2人+手元スポット 雇用を正式に整えやすい
受注単価 100万~300万円台が中心 500万円クラスの元請直案件が増える
融資 個人名義メインで小口 事業としての信用力が上がり、設備資金を引き出しやすい

このクラスになると、元請からの「次の現場は金額が大きいから、そろそろ許可を」という話が現実味を帯びます。ここで重要なのは、単に制度上の要件を満たすかではなく、許可をテコに単価と資金調達をどう変えるかという視点です。

ポイントは次の3つです。

  • 経営業務管理責任者と専任技術者を、誰がどう兼務するかを早めに決める

  • 確定申告書や簡易な貸借対照表で、自己資本と利益の厚みを見せられる状態にする

  • 社会保険の加入方針を固め、従業員の待遇と元請の評価を同時に上げる

許可取得後、銀行や信用金庫の対応が変わるケースは少なくありません。
「継続して決算と決算変更届をきちんと出していること」が、審査担当者には最大の安心材料になります。

公共工事を視野に入れ始めた事業主が法人化と許可取得を同時に進めるときの注意点

最後は、「そろそろ公共工事や大手元請との直接取引を本気で狙いたい」というステージです。ここでの典型的な落とし穴は、法人化と許可の取り直しを一気に進めて、受注できる工種や規模が一時的に縮むパターンです。

論点 個人のまま許可取得 法人化と同時に許可取得
スピード 比較的早い 定款や登記も絡み時間が延びやすい
経営業務の要件 自分の経験をそのまま使いやすい 役員構成を要件に合わせて調整が必要
将来の更新・継承 個人に紐づく 事業承継や株式とセットで考えやすい

公共工事まで見据えるなら、次の順番と視点を外さないことが大切です。

  • どの工種でどのランクの公共工事を狙うかを、元請や役所の発注情報で具体化する

  • 法人の役員に誰を入れて、経営業務管理責任者の要件をどうクリアするかを事前に社内調整する

  • 個人の実務経験や実績を、法人の申請時にも説明できるよう資料を一元管理しておく

特に、名義だけ社長にして実際の経営は別人という状態は、審査でも現場でも一番疑われます。公共工事は、社会保険加入状況や決算報告の継続提出も細かくチェックされますから、「見せかけの法人化」ではなく、経営と現場の実態が一致した形で進めることが、長く稼ぎ続ける近道になります。

この記事を書いた理由

著者 – 小野義宏

建設会社や職人さんの集客支援を続けてきて、ここ7〜8年ほどで強く感じているのが、「仕事は増えているのに、建設業許可と社会保険の判断で足踏みしている一人親方」が本当に多いことです。年商3000万前後で、元請から「そろそろ許可を」と言われながら、個人で取るか法人を作るか決めきれず、2〜3年チャンスを逃したケースを10件以上見てきました。
中には、500万円ラインを分割契約でごまかし続け、元請の内部監査で発覚し、大型案件の発注を止められた方もいます。名義貸しで一時的に売上だけ伸ばし、その後の融資審査で説明に窮した相談もありました。
マーケティング支援の現場で、「集客以前に、許可の取り方とタイミングを数字で整理しないと、広告を出しても意味がない」と痛感し、このテーマを一度体系立てて言語化しておく必要があると考えました。感覚や噂ではなく、今の自分の規模と5年後の姿から、個人と法人どちらで進めるかを決められる材料を届けたくて、この内容を書いています。