塗装が長持ちしない原因の多くは、実は「ケレン不足」です。旧塗膜や錆、汚れを除去し、表面に微細な凹凸をつくることで塗料の密着力が大きく向上します。日本建築学会や各種仕様書でも下地調整の重要性が明記され、実務でもケレンの品質が耐久年数を左右することが知られています。仕上がりと寿命は、塗る前の一手間で決まります。
とはいえ「1〜4種の違いが曖昧」「活膜と死膜の見極めが不安」「工具選びや安全対策がわからない」といった悩みはつきもの。本ガイドでは、到達レベルの基準、屋根・外壁・鉄部別の使い分け、電動工具と手作業の段取り、安全と近隣配慮、費用の考え方までを要点整理しました。
さらに、黒皮や赤錆の進行度に応じた除去レベル、番手選定と交換タイミング、洗浄・脱脂・塩分除去による再付着リスク低減、鉛を含む旧塗膜への配慮、木部・モルタル・RCの傷めないケレンまで網羅。読み終えた瞬間から、現場で迷わず実行できるはずです。
塗装でケレンの基本を短時間で押さえる入門ガイド
ケレンとは何かを塗装の下地処理の中でわかりやすく解説
塗装の仕上がりと寿命を左右するのがケレン作業です。ケレンとは、旧塗膜や錆、汚れ、チョーキング粉を除去し、素地を清浄かつ適度に粗した状態へ整える下地処理を指します。目的は明快で、塗料の密着性を高めること、そして腐食因子を取り除いて耐久性を底上げすることです。鉄部ではワイヤーブラシやサンダー、グラインダーなどの電動工具を使い、木部やコンクリートではサンドペーパーやスクレーパーで目荒らしを加えます。工程としては清掃→劣化部の除去→目荒らし→脱脂・粉じん除去の順が基本です。塗装 ケレンの質が担保されると、上塗りの性能が設計値に近づき、剥離や膨れのリスクが大幅に低減します。DIYでもプロでも、まずは「付着不良の原因を残さない」視点で道具と方法を選ぶことが重要です。
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ポイント
- 密着性向上と耐久性確保がケレンの核心
- 目的に応じて電動工具と手工具を使い分ける
ケレンの語源と意味をやさしく整理
ケレンの語は、現場では「下地の汚れ落としや錆落とし、目荒らし」をひとまとめに表す実務用語として使われます。語源は諸説ありますが、英語のcleanに由来するとされる説が知られ、意味合いは「きれいにして塗料が付きやすい面に整える」です。建築塗装では1種~4種といった種類区分があり、対象部位の劣化度に応じて方法と工具を選定します。例えば、広範囲の旧塗膜除去にはサンダーやディスクグラインダー、細部にはスクレーパーやワイヤーブラシを用います。なお「ケレン味」という別分野の用語や「ケレンの漢字」を当てる表記は塗装実務では一般的ではありません。塗装 ケレンの意図は常に付着性の最大化であり、見た目の清掃だけでなく、表面に微細な凹凸を作ることまで含めて理解すると選ぶ道具がぶれません。
| 区分 | 概要 | 主な道具・電動工具 | 想定シーン |
|---|---|---|---|
| 1種 | 投射材で素地調整 | ブラスト装置 | 重防食や全面更新 |
| 2種 | 電動で旧塗膜・錆を除去 | ディスクグラインダー、サンダー | 鉄部の広範囲劣化 |
| 3種 | 劣化部のみ除去 | スクレーパー、ワイヤーブラシ | 部分補修 |
| 4種 | 目荒らし・清掃 | サンドペーパー、ケレンパッド | 軽微劣化や木部等 |
補足: 区分は目標面の清浄度と粗さを示し、道具選定と工程管理の基準になります。
塗装の仕上がりや寿命はケレンでどう変わる?
ケレンが行き届くと、塗膜は素地に機械的に“かみ合う”状態になり、付着力が向上します。その結果、端部の剥離防止、錆の再発抑制、上塗りの美観維持に直結します。逆に不十分だと早期の浮き・膨れが発生し、補修コストが増えます。実務では、塗装 ケレンに電動工具を活用して均一な粗さを確保し、仕上げで粉じんと油分を除去することが要です。とくに鉄部は2種相当のディスクグラインダーやサンダー、ワイヤーホイールが有効で、木部やコンクリートは番手を調整した研磨で目詰まりを避けます。作業後の素地確認は視認だけでなく、触感でのザラつきやテープでの簡易付着チェックが実務的です。仕上がりと寿命を伸ばす鍵は、塗る前に「残さない・粗す・脱脂する」を徹底することにあります。
- 劣化因子の除去を最優先で行う
- 目荒らしで機械的アンカーを確保する
- 粉じんと油分を完全に除去してから塗る
- 端部・継ぎ目を重点的にケレンする
補足: 手戻りの多くは前処理由来です。前段の精度が上塗りの性能を引き出します。
ケレンの種類を見分けるコツと使い分けのポイント
1種ケレンから4種ケレンまでの違いとそれぞれの目的
ケレンは下地の状態に合わせて1種から4種に分類されます。到達レベルを把握すると誤選定を防げます。1種は鋼材をほぼ素地(白鋼)まで戻す重防食レベルで、サンドブラストやショットブラストなど強力な方法を使います。2種は電動工具で広範囲の錆と旧塗膜を大部分除去し、新設や大規模改修の鉄部に適します。3種は死膜と浮き錆のみを確実に除去し、活膜を活かす再塗装向け。4種は清掃と目荒らし中心で、新しい塗膜の密着を補助します。代表工具は以下の通りです。
| 種別 | 到達レベル | 主目的 | 代表工具 |
|---|---|---|---|
| 1種 | ほぼ素地 | 重防食 | サンド/ショットブラスト |
| 2種 | 広域除去 | 大規模改修 | ディスクグラインダー、サンダー、ワイヤーホイール |
| 3種 | 部分除去 | 再塗装 | スクレーパー、ワイヤーブラシ、サンドペーパー |
| 4種 | 清掃・目荒らし | 密着補助 | 不織布パッド、細目ペーパー |
塗装ケレン方法の選定は、素地、劣化度、求める耐久の三点で絞るのが近道です。
活膜や死膜を識別する現場チェック術
再塗装では活膜を残せるかが勝負です。まずは素手で撫で、粉化やチョーキングの有無を確認します。次にスクレーパーで角部から軽くこじり、剥がれが連鎖する層は死膜と判断します。クロスカットを入れて養生テープで引き剝がし、残存率が高い層=活膜の目安です。叩き音も有効で、浮きは軽く響くのが特徴。湿り気や白錆があると密着が落ちるため乾燥後に再判定します。仕上げ前にはサンドペーパーで全面を均一に目荒らしして塗料の密着を底上げ。判断に迷うときは、試験塗装を小面積で行い、24〜48時間後の付着を点検すると失敗が激減します。
黒皮や錆の進行度による除去レベルを徹底解説
鋼材の黒皮(ミルスケール)は一見硬く見えますが、下から錆が進行しやすく、長期の防食を狙うなら2種以上での除去が無難です。赤錆は粉状の流れ錆か、層状に膨れた錆かで対応が変わります。粉状は3種でも対応可能ですが、層状や点食が見える場合は電動工具で地金の健全層まで戻します。黒錆(緻密な酸化膜)は活膜と共存しやすいものの、塗料の仕様上は全面目荒らしが前提です。コンクリートやモルタルのケレンはレイタンス除去と脆弱部のはつりが中心で、サンダーの番手は#60〜#120を使い分けます。目的は一つ、塗料の密着と付着持続性を最大化することです。
屋根や外壁や鉄部でベストなケレンの選び方
対象ごとに最適な塗装ケレンの選び方を押さえると、工期と耐久の両立がしやすくなります。
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屋根板金:広面積で錆が点在しやすいので、ディスクサンダー主体の2種で均一研磨。重度の剥離部のみ3種のスクレーパーで先行処理。
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雨戸・戸袋:成形鋼板は歪みやすいので、低圧・広面接触のサンダーと不織布パッドで4種〜3種。端部はケレンスクレーパーが効きます。
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手すり・フェンス:溶接部と角、支柱根元は腐食が集中。局所は2種、面は3種で段階的に除去し、素地露出部は早めに防錆プライマー。
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モルタル・RC:脆弱部の打診・はつり後にサンダーでレイタンス除去。塗り重ねは吸い込み調整が鍵なので、4種の目荒らしを丁寧に。
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屋外階段裏・デッキ:結露帯は錆が進みやすいので、防錆仕様を見据えた2種寄りの深めの下地調整が長寿命に直結します。
電動ケレン工具は効率が武器ですが、仕上げの手工具での面の均しとエッジ処理まで徹底することで、剥離トラブルを確実に減らせます。番号リストで手順を整理します。
- 劣化診断で到達レベル(1〜4種)を決定する
- 荷重と回転数を管理しながら粗研磨→微研磨へ移行する
- 素地露出部は即時に防錆プライマーでフラッシュラスト抑制を行う
- 全面の目荒らしと清掃で塗料の密着を均一化する
塗装ケレンの工具選定と工程管理が、仕上がりと耐久の差になります。効率と丁寧さの両立を意識すると成功率が上がります。
ケレンのやり方を徹底解剖!施工手順と安全ポイントまとめ
電動工具を活かすケレンの段取り術と安全のコツ
塗装ケレンを電動で進めるなら、段取りが仕上がりを左右します。まず現場を養生し、火花の飛散方向と退避動線を確保します。ディスクグラインダーやディスクサンダーは材料に合わせて回転数を調整し、金属は高め、木材や旧塗膜は熱で溶けやすいため低中速で当て過ぎないことがコツです。基本は面に対して10〜15度の浅い角度で軽く当て、押し付けずに当てる時間で除去量をコントロールします。粉じんは作業者と仕上がりの敵です。集じん機や集じん対応サンダー、ワイヤーブラシには火花対策のスパークカバーを併用し、風下を意識して配置します。ケーブルや電源容量の事前確認、切断スイッチの位置、刃の正回転方向も点検しましょう。最後は清掃を挟んで素地状態を確認し、必要に応じて2種ケレンと3種ケレンを組み合わせると、塗料の密着と表面粗さのバランスが取りやすくなります。
ディスクの番手や種類の賢い選び方
ディスクの選定は除去スピードと仕上がりの両立が鍵です。広い面の錆や旧塗膜はフラップディスクの#40〜80で素早く削り、仕上げ側は#120前後で目を整えます。凸凹やボルト周りにはカップワイヤー、熱を入れたくない仕上げや旧塗膜のエッジ馴染ませには不織布ディスク(中〜細目)が使いやすいです。アルミや薄板は目詰まりしやすいため、オープンコートの砥材を選ぶと安定します。交換タイミングは火花の勢いが落ちたとき、振動が増えたとき、当たりが滑る感触が出たときが目安です。砥材が摩耗したまま使うと面温度が上がり、塗膜が溶けて密着を損なうため逆効果です。サンダーのパッド硬度も仕上がりに直結します。曲面は柔らかめ、平面は中硬度がきれいに当たり、塗装ケレンの品質が安定します。
| 用途 | 推奨ディスク/番手 | ポイント |
|---|---|---|
| 厚い錆・旧塗膜の除去 | フラップ#40〜80 | 角度は浅く、熱を入れすぎない |
| 細部・段差周り | カップワイヤー中・硬 | 当てすぎると傷が深くなる |
| 仕上げの目均し | フラップ#120前後 | 研削痕を整えて密着安定 |
| 熱に弱い素材や仕上げ | 不織布中〜細目 | 面圧を軽めに一定で当てる |
短時間で面を整え、次工程のプライマーが均一に乗る状態を目指します。
火花や騒音や振動のストレスフリー対策
電動の塗装ケレンは、火花・粉じん・騒音・振動の管理が品質と体調を守ります。火花は可燃物を半径5m以上退避、濡れウエスや消火器を手元に備え、火の粉の落下先に養生板を敷きます。騒音は時間帯と防音シートの併用で近隣配慮を徹底し、金属共鳴を避けるためクランプで固定してから作業します。振動は防振手袋と軽量工具を選び、連続15〜20分ごとに短い休憩を挟むと疲労と白指リスクを抑えられます。粉じんはP2以上の防じんマスクとフェイスシールド、集じん併用で吸入を減らし、風向きに背を向けないことが重要です。延長コードの巻き癖は発熱の原因になるため必ず全長を伸ばし、雨天や結露での通電は避けます。火花の飛散方向を常に把握して作業姿勢を決めれば、作業者も周囲も安全な塗装ケレンが実現します。
手作業で極めるケレンの仕上げテクニック
手作業の塗装ケレンは、電動後の仕上げや3種ケレンで真価を発揮します。スクレーパーは刃先を5〜10度で寝かせ、引き方向で薄く削いで死膜だけを確実に落とします。ワイヤーブラシは繊維方向または錆の流れに沿って一定ストロークで動かし、押し付けず一定の面圧をキープするのが傷を浅く保つコツです。ケレンパッドやサンドペーパーは#120前後で目荒らし、プライマーの機械的アンカー効果を引き出します。角や見切り、ボルト周りは活膜を傷めないよう縁を残す意識で攻め、最後に脱脂ウエスで微粉と油分を拭き取ります。手工具は音と火花が少なく近隣負担が小さいため、屋内や夜間作業でも使いやすいのが利点です。仕上がり確認は目視と触感の両方で、引っ掛かりが残る部位のみ再処理すれば、塗料の密着と耐久が安定します。
ケレンで使う工具と道具選びプロの組み合わせ術
ディスクグラインダーやサンダーやワイヤーブラシの徹底比較
塗装の下地調整は工具選びで仕上がりが決まります。ディスクグラインダーは除去力が最強で、厚い旧塗膜や頑固なさびを一気に削れますが、粉じんと火花が多く面出しが荒めになりやすいです。ランダムサンダーは面出し品質が安定しやすく、研磨痕が目立ちにくい一方で、重度の劣化には時間がかかります。ワイヤーブラシ(電動・手動)は到達性に優れ、ボルト頭や角、溶接ビードのケレンに有効です。コストは一般にワイヤーブラシが低く、サンダーが中、グラインダーは砥石消費と防じん対策まで含めると中〜高。塗装ケレンの品質は密着と耐久を左右するため、広面はサンダー、重防食や厚膜はグラインダー、細部はワイヤーブラシという複合運用が合理的です。防じんカバーや集じん機を組み合わせ、粉じんを最小化すると作業効率も上がります。
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強力除去にはディスクグラインダー、面出し重視はサンダー、細部はワイヤーブラシ
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粉じん・火花・振動の管理で仕上がりと安全性が向上
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広面・重度・細部の3分類で工具を使い分けるのが効率的
スクレーパーやケレンパッドやサンドペーパーで細部もピカピカ!
スクレーパーは浮いた旧塗膜の起点を素早く剥がすのに最適で、角や端部のライン出しに強いです。ケレンパッドは柔軟で曲面やボルト回りに密着し、均一な目荒らしを付与できます。サンドペーパーは番手管理で粗削りから仕上げまで一気通貫、最終の密着づくりに有効です。角はスクレーパーを面に対し浅角度で当てて段差を作らず、端部はパッドで境界のフェザーエッジを整えます。ボルト回りや溶接部は放射状に当てると研磨ムラを抑えられます。塗装ケレンの最終仕上げでは、研磨粉の清掃と脱脂が肝心です。サンドペーパーは#80〜#120で整え、仕上げに#180前後で目をそろえると多くの塗料で相性が良好。手工具は過研磨を避けつつ“必要十分”に除去する姿勢が結果的に密着と工期のバランスを高めます。
| 工具/資材 | 得意箇所 | 強み | 注意点 |
|---|---|---|---|
| スクレーパー | 角・端部・浮き塗膜 | 初動除去が速い | 深い傷に注意 |
| ケレンパッド | 曲面・ボルト周り | 追従性と均一性 | 目詰まり管理 |
| サンドペーパー | 広面の仕上げ | 番手で調整自在 | 粉じん清掃必須 |
ケレン作業の消耗品管理と交換タイミング
ディスクや紙やすりは切れ味が落ちたら即交換が原則です。判断の目安は、同じ圧で削っても火花量が減る、摩擦熱が増える、研磨粉が粗くなるなどのサインです。紙やすりは目詰まりで色が均一に黒っぽくなったら交換、パッドはエッジの丸まりが出たら精度低下の合図です。消耗が進むと面出しが不均一になり密着不良の発生に直結します。在庫は粗中細の番手や砥材種別を用途別に最低1ロール(または数枚)余剰で持ち、現場の面積と材質に応じて1日分+予備二割を目安にします。ディスクは用途別(剥離・研磨・仕上げ)で色分けして取り違いを防止。塗装ケレンの歩留まりは消耗品の健全性に依存します。交換をケチらず、生産性と仕上がりを両立させる体制がコスト最適化の近道です。
- 切れ味低下や目詰まりを感じたら迷わず交換する
- 用途別に番手と砥材を色分け保管し取り違いを無くす
- 面積と材質から1日使用量を算出し予備二割を確保する
- 研磨後は清掃と脱脂で密着の障害を残さない
ケレン後の下地処理で塗装の密着力をグッと高めるコツ
高圧洗浄や脱脂や塩分除去で再付着リスクを撃退
ケレン作業で錆や旧塗膜を除去しても、表面に油分や塩分が残れば塗料の密着は不安定になります。まずは高圧洗浄で粉じんと汚れを落とし、必要に応じて中性〜弱アルカリ洗剤で脱脂します。海沿いの住宅や鋼材は塩分が再錆の起点になるため、塩分除去剤の併用が効果的です。乾燥は表面乾燥だけでなく素地含水の低減まで意識し、早朝の結露や白錆の再発を避けるために作業時間帯にも配慮します。ディスクサンダー後の微粉は静電で付着しがちなので、集塵機付き工具やエアブロー→拭き取りの二段清掃を徹底します。仕上げ拭きは不織布+脱脂剤が基本です。塗装ケレンの効果を活かす鍵は、洗浄圧・洗剤・乾燥の三要素を現場条件に合わせて最適化することです。
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ポイント
- 洗浄圧は10〜15MPa前後を目安、素地を傷めない範囲で均一洗浄
- 脱脂は塗料推奨の溶剤やアルカリ洗剤を使い、拭き取りを確実に
- 塩分は拭き取り検査紙で確認し、残留があれば再洗浄
素地調整の最終チェックリストで失敗ゼロへ
ケレン方法や工具が適切でも、見落としがあると剥離やムラの原因になります。塗装前の最終段階では、目荒らしの均一性、残存粉じん、エッジ面取りなどを定量的に確認します。特に金属の2種ケレンや3種ケレンでは、活膜と死膜の見極めが重要で、死膜のみ確実に除去し、活膜は適正な粗さに整えます。ディスクグラインダーを使った箇所は研削痕の方向を一定にし、交差研磨でアンカー効果を安定化。ボルト周りや溶接ビードには錆の巣が残りやすいため、ワイヤーブラシとスクレーパーの併用で細部を詰めます。最終は清浄度と粗さを目視と触診で再確認し、素手の皮脂が付かないよう手袋を交換します。塗装ケレン後の一手間が、密着と耐久の差を生みます。
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チェック項目
- 目荒らしの粗さが均一で光沢残りがない
- 粉じん・油分・塩分が残留しない
- エッジや切断面に面取りがあり、膜厚が乗る
- 活膜と死膜の区別が適正で、剥離因子を排除
プライマーや下塗り選びでケレン効果を最大化!
下塗りは素地と上塗りの橋渡しです。金属にはエポキシ系防錆プライマーが標準で、亜鉛めっきはジンクリッチや密着向上プライマーを選定します。アルミやステンレスは密着プライマーで界面を安定化。2種ケレンで粗さが出ている場合は、高固形分のエポキシ下塗りが凹凸を埋めつつアンカー効果を活かします。3種ケレンで活膜上に塗る際は、活膜適合の下塗りを選び、相性の悪い溶剤でのリフティングに注意します。塗布タイミングはケレン後できるだけ早くが基本で、結露や再錆前に封じ込めます。膜厚は仕様値を守り、端部や溶接部は先行タッチアップ→全体塗装で膜厚不足を回避します。塗装ケレンと下塗りの相性が噛み合えば、密着・防錆・耐候が一段と向上します。
| 素材・状態 | 推奨下塗り | 要点 |
|---|---|---|
| 鋼材(2種ケレン後) | エポキシ系防錆プライマー | 粗さを活かしつつ規定膜厚を確保 |
| 既存活膜上(3種ケレン) | 活膜適合エポキシ下塗り | 溶剤相性とリフティング対策 |
| 亜鉛めっき・トタン | ジンクリッチや密着プライマー | 白錆対策と早期塗布 |
| 非鉄(金物・アルミ) | 密着向上プライマー | 目荒らし+油分除去を厳密に |
- ケレン完了直後に塵を除去し、1時間以内の下塗りを意識する
- 端部やボルト類はタッチアップ先行で防錆を強化
- 指定乾燥時間と再塗装間隔を厳守し、膜間密着を確保
- 気温・湿度を記録し、結露域での塗装を回避する
ケレンの費用や単価をスッキリ把握!見積の不安を解消
2種ケレンや3種ケレンの単価と工数のリアルな違い
2種ケレンはディスクグラインダーやディスクサンダーなどの電動工具を主力とし、広い面積の旧塗膜やさびを効率よく除去します。工数は機械化で短縮しやすい一方、集じん機や防音措置、砥石・ディスクの消耗が継続的コストになります。3種ケレンはワイヤーブラシやスクレーパー中心で、活膜を残して死膜のみを除去するため、細部に時間がかかりますが機材コストは軽めです。単価は一般に2種ケレンが高め、3種ケレンが低めの傾向です。選定の目安は、劣化が進行している鉄部や旧塗膜の剥離が目立つ場合は2種、付着良好な塗膜が多く残る場合は3種が合理的です。仕上がりの密着性を確保したいなら、2種でしっかり目荒らしし、3種で細部の仕上げを組み合わせるのも実務的です。
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主なコストドライバー
- 人工(作業人数と日数)
- 工具消耗(ディスク・ワイヤー・替刃)
- 養生(飛散・防音・防火対策)
- 集じん(粉じん対策機器と運用)
面積や足場や劣化度で価格が変わるワケ
同じ塗装部位でも、面積が大きいほど単価は漸減しやすい一方、細分割された小面積や局面が多いと段取りロスが増えて割高になります。足場の有無や階数は搬入・動線・安全管理の難易度を引き上げ、ケレン単価にも跳ね返ります。劣化度が高いほど除去量が増え、2種ケレンの機械稼働時間や消耗品が膨らみます。立地が住宅密集地であれば騒音・粉じん対策が強化され、夜間制限や作業時間帯の制約もコストに影響します。付帯物(手すり、サッシ周り、看板、配管など)が多い現場は、養生と手元作業の比率が増え、実働の生産性が低下します。結果として、劣化度×形状複雑性×環境制約がケレン方法の選択と単価レンジを左右します。
| 変動要因 | 影響の方向性 | 具体例 |
|---|---|---|
| 面積・形状 | 大面積は単価漸減、小面積や曲面は割高 | 長尺手すりは効率的、装飾が多い意匠鉄骨は非効率 |
| 足場・階数 | 高所・仮設でコスト増 | 3階以上や狭小足場で段取り時間増 |
| 劣化度 | 除去量増で2種ケレン時間・消耗増 | さび層厚い、旧塗膜が全面剥離 |
| 立地制約 | 騒音・粉じん対策でコスト増 | 近隣学校・病院隣接で機械使用制限 |
| 付帯物の多寡 | 養生・手元作業が増え割高 | 配管・ボルト・リベット多数 |
見積時に押さえたいケレン範囲や品質チェックまとめ
見積でトラブルを避ける鍵は、どこまでをケレン範囲に含めるかと品質基準を事前に文章化することです。まず対象部位の図面や写真に施工範囲線を引き、裏面やエッジ、ボルト頭や溶接部の扱いを明記します。次に仕上げ粗さ(目荒らしの程度)を材料仕様に合わせて定義し、活膜・死膜の合否基準と局所再ケレンの条件を共有します。必要に応じて、2種と3種の併用境界を現地でマーキングし、粉じん・騒音の作業時間帯、養生や集じんの体制をセットで合意します。検査はオーナー立会いで、目視・素手触感・テープ剝離試験など簡便な方法を組み合わせ、不合格時の再検査や追加範囲の単価適用ルールを明示します。これにより、塗装ケレンの品質と費用のブレを最小化できます。
- 範囲定義:図示と現地マーキングで対象面を確定
- 粗さ・密着:仕上げ粗さと活膜残しの合否を明文化
- 併用条件:2種・3種の切替基準を現地で合意
- 環境対策:養生・集じん・作業時間帯を記載
- 検査手順:立会い、試験方法、再検査条件を明記
鉛を含む旧塗膜や危険物質に配慮したケレンで安全・安心を
鉛入り塗膜のケレンで欠かせない養生や集じん対策
鉛を含む旧塗膜の除去は、通常の塗装ケレン作業よりも厳格な管理が必要です。粉じんの飛散を抑えるため、集じん機連動の電動工具を使用し、作業エリアを陰圧化して外部への漏えいを防ぎます。開口部や仮設の区画にはポリシートなどの養生材を二重張りし、継ぎ目をテープでシールします。発生した剥離片や研磨粉はHEPA対応の集じんで回収し、廃棄物は内袋と外袋の二重袋で封じ込め、ラベルで内容物を明記します。床面は粘着マットを設置して二次拡散を抑制します。電動サンダーやディスクグラインダーを使う場合でも湿式や低回転で粉じん低減を意識し、養生撤去時は内側から畳んで密封します。これにより、作業者と周辺環境の双方でリスク最小化が図れ、塗料の密着や仕上がりだけでなく、安全性とコンプライアンスも確保できます。
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集じん機連動や陰圧管理で粉じんを外に出さない
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養生材の二重張りとシールで区画を密閉
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廃棄物の二重袋封じ込めとラベル表示で管理を明確化
個人防護具や作業エリア管理でリスクカット
鉛リスクのある塗装ケレンでは、適切な個人防護具の着用とエリア管理が事故防止の要です。呼吸保護は区分に応じた防じんマスクやP100相当のろ過材を選定し、密着フィットチェックを徹底します。皮膚保護は使い捨て防護服、ニトリル手袋、保護眼鏡、フェイスシールドを組み合わせ、袖口や裾はテープで隙間をなくします。エリアは立入管理を明示し、掲示と入退出記録で管理を可視化します。作業後は以下の手順が有効です。
- 工具の外面と養生内の湿式拭き取りで粉じんを固定
- HEPA集じんで床・足場・躯体を順に清掃
- 防護具の外層→内層の順で脱衣し、袋内で封緘
- 洗眼・手洗い・うがいを実施し、作業着は現場で密閉保管
- 最終に陰圧解除→養生撤去→再清掃→拡散確認
この流れにより交差汚染を抑止でき、現場内外の安全と品質を両立します。関連する工具・防護・管理の対応を一覧で整理します。
| 区分 | 主な対策 | 要点 |
|---|---|---|
| 呼吸保護 | 防じんマスク/ろ過材 | フィットチェックと規格適合 |
| 皮膚・眼面保護 | 防護服・手袋・保護眼鏡 | 隙間シールと使い捨て運用 |
| エリア管理 | 立入制限・標識 | 入退出記録と区画の陰圧維持 |
| 清掃・廃棄 | HEPA集じん・二重袋 | 湿式清掃と内容表示で封じ込め |
清掃の質がそのまま曝露低減につながり、再作業の防止にも役立ちます。
木部やモルタル・RCのケレンで下地を傷めず美しく
木部のケレンで塗装前の毛羽立ちをすっきり整える
木部の塗装前ケレンは、素地を削り過ぎずに毛羽立ちを抑え、塗料の密着と平滑性を高めるのが目的です。番手は粗→中→仕上げの順で上げると効率的で、導管に粉が詰まらない配慮が重要です。一般的には80〜120で成形、150〜180で整え、仕上げは220〜320で目詰まりを抑えながら滑らかにします。サンダーを使う場合は回転方向と木目を合わせ、木口は削り過ぎに注意します。導管詰まり対策として、研磨工程ごとにブロワーで粉を飛ばし、タッククロスで微粉除去を徹底します。ヤニの多い材はアルコール拭きで脱脂し、節周りはシーラー前の丁寧なケレンで後の剥離を予防します。電動工具は空転当てを避け、面圧は一定、エッジは角落とし程度に留めるとムラを抑えられます。塗装ケレンの基本にある「傷めず整える」を守るほど、塗膜は均一にのり、吸い込みムラや剥離の発生を抑えられます。
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番手を段階的に上げる(80/120→150/180→220/320)
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木目方向に研磨し導管を潰さない
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ブロワーとタッククロスで粉を残さない
モルタルやRCのケレンで塗装不良をシャットアウト
モルタルやRCの塗装前ケレンは、レイタンスや脆弱層の除去、ひび(クラック)周りの処理、含水率の管理が核です。レイタンスはディスクサンダーやカップ砥石で均一に削り、粉塵を除去してから下塗りへ進みます。ひびはUカットやVカットの要否を見極め、ワイヤーブラシで目荒らしし、清掃後にシーリングや樹脂モルタルで充填します。含水率は5〜8%目安を基準にし、雨後や新設は十分な乾燥期間を確保します。脆弱層はハンマリングで音を確認し、浮きがあればはつりやエポキシピンニングを検討します。レイタンスが残ると密着不良や早期剥離の原因になり、含水過多は白化や膨れを誘発します。塗装ケレンの工程を標準化し、電動工具と手工具を適切に併用することで、下地強度を保ちつつ塗料の性能を最大限に引き出せます。最終は清掃と吸い込み確認を行い、下塗りの選定(浸透・エポキシなど)まで一貫して管理します。
| 対象部位 | 主な劣化要因 | ケレン方法 | 重要ポイント |
|---|---|---|---|
| モルタル素地 | レイタンス・中性化 | サンダー研磨・ワイヤーブラシ | 粉塵除去と吸い込みの均一化 |
| ひび周り | 乾燥収縮・振動 | 目荒らし後に充填 | クラック幅に応じた材料選定 |
| RC打継ぎ | レイタンス・段差 | 研削と段差調整 | プライマーの密着確保 |
- 現況診断(含水率・脆弱層・クラック幅)
- レイタンス除去と清掃(集塵・拭き取り)
- ひび処理と補修材の硬化確認
- 吸い込み確認後に下塗り選定
- 仕上げ前の再点検で不陸や粉残りを是正
ケレンについてよくある質問をまるごと解決!
ケレン1種や2種や3種の違いをカンタン整理
塗装の下地調整であるケレンは、到達度合いと方法で段階が分かれます。1種は素地をほぼ新材レベルに戻す完全除去、2種は劣化塗膜と錆を広範囲で実用的に除去、3種は浮きや脆弱部のみ選択的に除去が基本の考え方です。鉄部や鋼材の状態、面積、工事の目的によって最適解は変わります。電動工具はディスクグラインダーやディスクサンダー、ワイヤーホイールが中心で、手工具はワイヤーブラシやスクレーパーが活躍します。塗料の密着と耐久性はケレンの質で決まるため、種類の見極めと工具選定が重要です。
| 種類 | 目的/到達度 | 代表工具 | 適用範囲 |
|---|---|---|---|
| 1種 | 旧塗膜・錆の完全除去 | ブラスト(サンド/ショット) | 重防食、厚膜系、防錆最優先 |
| 2種 | 劣化塗膜と錆の実用除去 | ディスクグラインダー、サンダー、エア工具 | 階段・手すり・屋根鉄部など広範囲 |
| 3種 | 浮き・錆・死膜の部分除去 | ワイヤーブラシ、スクレーパー、サンドペーパー | 部分補修、活膜を活かす再塗装 |
電動ケレンは効率が高く、手工具は細部の仕上げに強みがあります。作業の組み合わせで効果を最大化できます。
塗装でケレンを省略するとどうなる?
ケレンを省くと、塗料が下地にしっかり密着できず早期剥離が起きやすくなります。旧塗膜の浮きや錆が残ると、内部からガスや腐食生成物が発生して膨れが生じ、見た目だけでなく防食性能も低下します。金属部では錆が素地と塗膜の間で進行し錆再発の加速につながります。さらに、表面が平滑すぎて目荒らし不足だと付着が弱く擦過でめくれるトラブルも発生します。結果として再補修が必要になり、工期や費用が増大します。塗装 ケレンの手間は、長期の耐久性とライフサイクルコストの低減に直結する重要工程です。
- 汚れ・旧塗膜・錆を除去して付着障害を排除する
- 目荒らしで機械的アンカーを作り密着を高める
- エッジやボルト周りは電動工具後に手工具で仕上げる
- 清掃と脱脂で粉じん・油分を除去してから塗料を塗る
手順を守ることで不具合リスクを大幅に低減できます。

